窓に影

 3秒くらいだろうか。

 暫く二人で目を合わせて、歩はテーブルの向かいへと戻った。

 さっきの手は何だったの?

 今までの抱擁がフラッシュバックした。

 鼓動は歩の腕の中にいるときと同じくらいの速さで鳴っている。



 落ち着くために混ぜすぎたコーヒーを飲み、ガトーショコラを口に入れる。

 私には、母との味の違いなんてさっぱりわからなかった。

「受験、頑張ってね」

「おう。恵里も来週から期末テストだろ。頑張れよ」

「うん」

 あとの会話といえば、これくらい。

 ガトーショコラがなくなると、歩は自宅へと帰っていった。

 










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