窓に影
フッ
さっきの嘲笑を見せる。
「気合いなんて入ってないし。普通だよ」
私は顔を見ずに机の椅子に座った。
歩は更に声で笑う。
「化粧もしてんじゃん。もったいないんじゃなかったの?」
腹が立って歩の方を向いた。
私のベッドに腰掛けている。
「学校に行ったままなの。別に歩のためじゃないし」
ふーん、と言いながら立ち上がり、こちらに向かってきた。
思わず身を硬くする。
歩は私の元へ来たかと思うと、スッと顔を近づけてきた。
動けないでいると、歩の顔は正面でなく、頭の後ろへ行ってしまった。
「な、何……?」
「やっぱり。お前香水付けてるだろ」
顔は頭の後ろのまま、独特の低い声で言った。
「付けてるけど?」
カタッという音と共に、歩が自分用の椅子を準備した。
「いつ付けたか知らないけど、これくらいの微かな匂いって良いよな」