窓に影
声を殺して笑い合い、私は歩の胸に顔をうずめた。
説明なんていらない。
「それよりさ、誕生日プレゼントは?」
「そんなの準備してない」
「俺、今すげー欲しいもんがあるんだけど」
そう言って私の顔を覗く歩。
「ねだるの? 図々しいヤツ」
「だって恵里にしか頼めないもん」
手は私の頭を撫で、左耳のピアスに触れた。
「何? それ、高い?」
「だいぶ高いねぇ」
「え? どれくらい?」
「俺の片思い10年分」
「意味わかんない」
「またそれかよ」
「だってあたし、値段を聞いたんだもん」
頬を膨らませると、歩は意地悪に微笑み、メガネを床に放った。