窓に影
「違うだろ! この漸化式で公差はもうわかってんだろうが」
「え? dのこと? これが公差だっけ?」
「はぁ、お前、一回死ねば? バカ治るかもよ」
「パクんないでよ! 頭良いなら別の言葉選びなさいよね」
授業は今日も白熱する。
授業というより、もはやケンカだ。
ただ、ありがたいことに数学は体に染み込んでいく。
「じゃ、最後にこの問題解いて。俺は疲れたから寝る。出来たら起こせ」
そう言い捨てて私のベッドにダイブ。
掛け布団ではなく、自分のダウンジャケットをかけて目を閉じた。
「仕事中に寝てんじゃないよ」
小さく悪態づき、提示された教科書の問題を解いた。
その問題、まあ~時間のかかること。
二十分くらいかけて、やっと答えを導いた。
「ふー、できた……」
ため息で、溜まりまくった消しゴムのカスが転がった。