窓に影
四人テーブルの向かいに座る歩と響子さん。
メニューを持って二人で笑い合っている。
決して美男子ではないが、歩の優しい笑顔が癪に障る。
今気付いたけど、あたし、結構性格悪い。
素直に良いカップルだって認めたくない。
「恵里ちゃんて高校生でもオシャレなのね。羨ましいな」
オシャレで羨ましい?
どこがよ?
「私がですか?」
「うん。あたしなんて、地味な高校生だったもん。化粧もしたことなかったし」
悔しいけど、たぶん必要なかったと思いますが。
「私も南高校出身なんだけど、学校が厳しくて。私もルーズソックス、履きたかったなぁ」
笑って頬杖を付く響子さんに、歩が言う。
「履かなくていいよ、こんなの」
「やーね。女の子は一度は履いてみたいものなのよ」
ははは、と、愛想笑い。
ルーズソックスの足で歩の足を軽く蹴ってやった。