窓に影
物心がついたときからお隣さん、幼馴染の西山歩。
同い年の高校二年生。
幼稚園、小学校、中学校まではもちろん一緒。
しかし成績優秀な彼は、この辺では有名な進学校、南高校へ。
そして、勉強が苦手な私、桐原恵里は、バカレベルの北高校へ。
どちらも県立ではあるが、そのレベルの差は天と地の差だ。
「歩君ね、バイトしたいんだけど、学校側が禁止してるからできないんですって。でもうちの家庭教師だったらバレないじゃない? ちょうどいいと思ってお願いしたの」
母め、余計なことを。
母は昔から歩のことを気に入っており、今でも見かけると芸能人でも見たかのように笑顔で手を振っている。
それに苦笑いで会釈する彼を何度か目にした。
もしかして私の成績なんてただの口実で、母の個人的な感情で雇ったのではないだろうか。
部屋に戻った私は再びカーテンを少し開けて向かいの窓を覗いてみた。
さっきと同じく左隅に影が見える。
きっと勉強でもしているのだろう。