窓に影
「よく来たわね~。近くで見ると背も高くなっちゃって。ホント、見違えたわよー」
はしゃぐ母の声が耳に響く。
階段を下りて玄関に出ると、愛想笑いをする歩が見えた。
「あ、恵里」
ふとこちらに視線を移した歩を見て、驚いた。
中学以来、制服姿しか見ていなかったからかもしれない。
そこに立っている彼は、オシャレな爽やか少年だった。
いい色に落ちたジーパンに、光の反射具合が上品な紺色のダウンジャケット。
くせっ毛だった髪は今っぽくカットされ、程よくボリュームを出している。
清潔感たっぷりの、「お兄さん」って感じ。
部屋着で臨んだ自分がみすぼらしく感じるほどだ。
こんなの、中学までの歩じゃない。
なんだか声をかけるのも緊張する……。