窓に影

 驚いたのはその宿題の量。

 私の北高校は、数学に限ってはプリント5枚。

 歩の南高校は、なんと問題集一冊。

 恐るべし南高校……。

 私には付いて行けそうにない。

「二人とも、おやつよ~」

 午後三時になり、おやつの時間。

 歩は自分の課題をテーブルから下ろした。

「わ、すげーいい匂い」

「今日はね、クッキー焼いたの」

「すっげ、うまそー」

 歩は相変わらず母に営業スマイルを向けている。

 母もそれに騙され、嬉しそうに部屋から出て行った。

 むしゃむしゃとクッキーを頬張る歩が、悔しいけれど可愛らしい。

「そんなに食べると、太るんじゃないの?」

「太らねーよ。頭使ってるし」

 前言撤回。

 やっぱ憎たらしい。
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