一番の笑顔
帰り道涙は止まらない。
蓮からは何度も何度も電話がきている。
でも今は出れるような状態じゃない。
朝方、やっと家に着いた。
目が覚めたのは夕方。
私は蓮にひどい事言ったなと思い電話をした。
「美憂!?なんで電話出なかったんだよ。心配しただろ!?」
蓮はすぐに電話に出た。
でも一瞬だけ電話の向こうから聞こえた声を私は聞き逃さなかった。
『心配かけてごめんね。
蓮。今誰かと一緒にいるでしょ?』
蓮は黙ってしまった。
「蓮くーん。あっ!ごめんなさい。電話中みたいだね。」
その声は昨日私が胸ぐらを掴んだ相手。久美の声だった。
『蓮ちゃん…?え?
今。久美と一緒にいるの?』
蓮は黙ったまんま話してくれない。
『聞いてる?ねぇってば。
……聞いてんのかって言ってんだよ!』
「おう…。一緒にいる。」
私はもう何がなんだか分からなかった。
どうにでもしろよって気持ちだった。
『なんで一緒にいるの?
意味が分からないんだけど。
なんで久美と一緒にいるの?』
「俺が会いに行った。
美憂。お前は俺の女なのか?
俺の事男として見てないんだろ?
兄貴として見てんだろ?
なのになんでそこまで
言われなきゃいけないんだよ。」
そっか…。そうだよね。
私は蓮の妹なんだもん。
私だって本当は好きだって
誰よりも好きだって言いたい。
でも言ったら今までみたいな
関係には戻れなくなるんだよ。
だから怖くて言えないんだよ。
『美憂にとって蓮ちゃんは
大切な人。兄貴として?
ううん。違う。この気持ちに
昨日やっと気付いたの。
美憂は兄貴として蓮ちゃんを
好きなんじゃなくて
一人の男として好きなんだ
ってやっと分かった。
でも蓮ちゃんは美憂の事
妹としてしか見てないもんね。だから諦めるよ。
信じてたんだ。
美憂には蓮ちゃんだけだから。
でも、昨日蓮ちゃんに
言われた言葉が頭から
離れなくて…。』