夜の知るもの
 
魔女と呼ばれた女に悪戯な風が吹き付ける。

ざわざわと遥か下に息づく木々の葉を揺らし、漆黒の艶やかな長い髪を宙へと踊らせた。


夜よりも尚闇色の髪は、星明かりに照らされちらちらと輝く。

それを指で梳くように掻き上げた女は、再び人々の生きる灯りを黒曜の瞳に映した。


「私が欲望という名の邪念に抗えなかったのも、今ならば肯ける…」

呟く女の瞳の色は、僅かに悲しげな濁りを宿す。

 
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