ハニー*スパイス
「こんばんは……」
なんだか照れくさくて、ドアのそばから動き出せないあたし。
目を丸くして驚いた岳さんは、タバコを床に落としてしまい「うわっ」って慌てて拾ってた。
「んだよ。
驚かすなよ。ユーレイかと思った」
相変わらず口が悪い。
だけど、全然怖くないもん。
「今日はなんも出せねーぞ」
「うん、わかってる」
あたしは一歩だけ中に入って、ドアを閉めた。
これ以上近づく勇気はなかった。
きっと触れたくなって……それから泣いちゃうかもしれないから。