ハニー*スパイス
「今考えてみれば、その頃から創造力に富んでいたんだろうね。
それは不思議な絵だったんだ。
真っ白な雪の上に、ポツンポツンっていくつもの椿の花が落ちていて……。
画用紙の端に行くほど、花の密度が濃くなって、最後は真っ赤に塗りつぶされていた」
あたしはパパの話しに耳を傾ける。
「その絵に感心したママが、その時言ったんだ。
『この子に椿って名前もらっていい?』ってお腹をさすりながらね。
パパが『女の子とは限らないよ』って言ったら、ママは『男の子でも椿ってかっこいいじゃない』って、『いやそれはちょっとヘンだよ』ってしばらく言い合いしてたら……」
「うん」
「また岳君が言ったんだよ。
『大丈夫だよ。その子はきっと女の子だよ』って」