ハニー*スパイス
その夜はベッドに入ってもなかなか寝付けなかった。
あの人……“岳”って名前なんだ。
頭の中で彼の名前を何度も繰り返す。
岳……岳……岳……
呪文みたいに唱えているうちに、彼の姿もちらつく。
クォーターかぁ……。
あの柔らかそうな茶色い髪もきっと地毛なんだろうな。
瞳も薄茶色で、肌が透き通るみたいに白くて……。
魔女というよりは、王子様って感じだった。
きっとあの森に住んでいるのは王子様だよ。
そんな風に考えると、胸がドキドキしてきて
カァッと頬が熱くなって。
「あーもぉっ……何これっ?」
布団をひっぱって頭まで潜る。
――ドクンッドクンッ
真っ暗な布団の中で響く鼓動を感じて
あたしはますます眠れなくなるのだった。