ハニー*スパイス
「これが、本当の“ヘクセンハウス”だよ」
岳さんの言葉にあたしは「えっ?」と、顔をあげた。
「ヘクセンハウスってのは、たしかに “魔女の家”って意味なんだけど。
実は、このお菓子の名前でもあるんだ。
そういう童話があるだろ?」
「ヘンゼルとグレーテル?」
「うん。
ドイツではクリスマス時期に作られるんだ」
「そうだったんだ……」
「食ってみる?」
「え……壊しちゃうの、なんかもったいないな……」
戸惑うあたしの代わりに、岳さんは、煙突の一部を崩した。
「どうぞ」
差し出された欠片をあたしは口の中に入れた。