ハニー*スパイス


「オレ、本当は、あの時からわかってたんだ。
親に捨てられたこと」


「えっ……」


「男と住むから、オレのこといらなくなったんだ……ってことも、子供心に理解してた。
もう二度と、迎えに来てくれないことも……」


「……」


「だからあの日。
仲の良さそうな夫婦を見て……産まれてくる赤ちゃんが幸せになればいいなって思った。
オレの分も幸せに……ってそう願ったんだ」


もう限界だった。

あたしの目からは涙があふれる。


「椿のことは、すぐにわかった。
あの時の子だってこと。
名前と歳と……それから、お前のママそっくりだったから。
オレが出したお菓子を文句も言わず全部食べたり、まっすぐにオレにぶつかってくる椿を見て……。ちゃんと愛情込められて育ったんだな……って思って……。
ホッとしたし、すげぇ眩しかった……」


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