ハニー*スパイス


「なんか上手く言えないけど……。
親に捨てられたオレにとって、椿の存在自体が奇跡みたいで……。
唯一の救いだったんだ」


――ポロッ


って頬が涙で濡れた。


あたしの……じゃなくて、岳さんの涙。


男の人の涙を、こんなにキレイなものだと感じたのは初めてだった。



岳さんは力を込めてあたしを抱きしめ、胸に顔をうずめる。


「椿……」


その肩が小刻みに震えてる。


だからあたしもギュって彼の頭を抱きしめた。


この場所で……

ずっとお母さんのことを待っていた


7歳の岳さんごと抱きしめてあげたかった。



「あたしは、どこにも行かないよ?」


安心していいよ……そう囁いて。



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