ハニー*スパイス


あたし達は裸のまま抱き合って。

時間を惜しむように、一晩中色んな話をした。


あたしはひとつだけ気になっていたことを尋ねた。


「ねぇ、岳さんがニューヨークに行くちょっと前、スーツを着ていたことがあったでしょ? 百合の花束を持って。
……あれは何だったの?」


「ああ……」と、岳さんはタバコに火をつけながら答える。


「あの日、納骨したんだ。花は墓前に供えるためだよ」



「そうだったんだ……」


それにしても……とあたしはむぅっとふくれっ面になる。


「ほんと、ウソつきだよね。
まさに今から恋人を迎えに行きます……って感じの幸せそうな顔してたもん」
< 193 / 203 >

この作品をシェア

pagetop