ハニー*スパイス
「ハハっ。
まぁ、あの日は母親のことはもうふっきるつもりだったから、ある意味、すがすがしい顔してたかもな。
あと、ニューヨーク行きが、もうあれ以上引き伸ばせなくなってたから……。
椿にオレのこと諦めてもらいたくて、わざと芝居してた」
「そんなこと言っちゃって……」
あたしは勝ち誇ったようにフフンと笑った。
「知ってるんだからね。
岳さんがニューヨークについてすぐにあたしの絵を描き始めたこと!」
「うわっ……マジで?
山口のやつ、そんなことまでバラしてんのかよ?」
頭を抱える岳さんが可愛くて、あたしは、その髪にチュってキスをした。
「実は、あたしも今、絵の勉強してるんだ」
驚かせるつもりだったのに。
岳さんはタバコの火を消しながら「知ってる」って答えた。
「へ? なんで知ってるの?」