ハニー*スパイス
「ねぇ、岳さん?」
「ん?」
「一目ぼれ……ってしたことある?」
なんだか恥ずかしくて。
スツールに腰掛けた足をプラプラさせて尋ねる。
唐突な質問に、岳さんは「なんだよ、急に?」と笑うだけで答えてはくれなかった。
「あたしは、あるんだ」
じっと見つめてそう言うと、こちらを見もせずに「へー」って全然興味のなさそうな声が返ってきた。
一目ぼれなんて……ありえない。
ずっとそう思っていた。
だけど、昨日初めて会った瞬間から、
きっと
あたしの心は彼に捕らわれていた。
もう自分の力じゃ逃げられないほどに。