ハニー*スパイス
ほんの少し口の端を上げ。
かぶっていた帽子を脱ぐと、軽く頭を振ってから髪をかきあげる。
その一連の動作を
あたしは彼から目をそらすこともできず見つめ続けていた。
――これは映画か何かの撮影かもしれない。
そんなバカなことを一瞬考えてしまった。
だって、目の前に立つその人は、今まで見たこともないようなキレイな顔をしていたから。
なんていうか、精巧に作られた人形みたい。
肌なんてそこらへんの女の子より白くてスベスベしてそう。
クセ毛みたいなゆるくウェーブのかかった茶色い髪を揺らしながら
まるであたしをエスコートするように、ゆっくりとドアを開ける彼。
「どうぞ?」