ハニー*スパイス
あの森の謎
「ホントに魔女の家があっただって!?」
口に含んだカレーライスを吹き出しそうになったパパが、慌ててグラスを手に取る。
“魔女の家”を発見したその日の夕食時。
あたしはあの森で見たことをパパに報告していたのだ。
「うん!
ホントにあったんだよ!
だって、住んでる本人が言ったんだもん。『魔女の家』だって。
おまけに、なんだか甘い香りがして……。
あたし思わず入りそうになったし!」
興奮気味のあたしを、パパはなだめる。
「ちょっと、椿(ツバキ)、落ち着けって」
“椿”というのはあたしの名前。
死んだママが、つけてくれたらしい。
あたしもこの名前がすごく気に入ってる。
うちはいわゆる父子家庭。
だからいつもこんな風にパパとふたりっきりで食事をする。
パパは手にしていたグラスをテーブルに置いて、しみじみ言う。
「そうか。椿が見たのは……きっとヘクセンハウスだな」
「そう、ヘクセンハウス……って、え?
パパ知ってるの?」
「ああ。
あれはね……」