ハニー*スパイス
声が震える。



「この店を開けたのは……百合さんのため?」


「ああ」


「あの窓から外を見て……彼女が来るのをずっと待ってたの?」


「そうだよ」



じわって視界が滲む。


岳さんは、最初から喫茶店をやるつもりなんてなかった。


ここ、ヘクセンハウスは百合さんのためだけの場所だったんだ。


そこにあたしが勝手に迷い込んで……踏み込んでしまった。


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