ハニー*スパイス



「わかったろ?
もう、帰れ」


岳さんはあたしの腕を引っぱる。


あたしは力なく立ち上がる。


聞きたいことはいっぱいあった。



じゃぁ、なんであたしを抱いたの?


あのキスに意味はあった?



愛されてなくてもいい、傷つけられてもいい


そんな風に思っていたくせに


いざとなったら、岳さんを責めるような言葉ばかりが浮かぶ。




グズグズ泣きながら、岳さんに引きずられるようにして歩く。


「ほら」


ドアの前に来た時、床に落ちていたバッグを岳さんが拾ってくれた。



これを受け取ったら、最後になるような気がして、あたしは手を動かすことができずにいた。


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