ファーストキスは、最後のキス
「リツー!帰ろー」
音楽室のドアを開けると、リツがドラムをまだ叩いてる。
「あ、さくら。ごめん、ごめん。時間見てなかったわ」
「もう、本当にドラム好きだね」
「だって、楽しいんだもん!」
前向きなリツが、少し羨ましかった。
今の私は、立ち止まったり、後ろを振り返ったり…。
「さ、帰るか!」
ドラムを、教室の隅に移動させると、
リツは、私の肩に手を置く。
「うん」
校庭に出て、テニスコートの前を歩く。
テニスコートと、バスケットコートをぬけると、門に着く。
「さくら、最近元気ない?」
「え?」
突然のリツの言葉に、少しドキッとした。
「どうして、そう思うの?」
私、そんな素振りしたっけ?
「んーや、とくに深い意味はないんだけど、いつもテンション高いくせに、最近は低いなぁ…ってさ。」
そんなことを思っていたんだ。
私のこと、ちゃんと見てくれてるんだなぁ…。
「うぅん!なんでもないっスよ。ちょっと最近お腹痛めて、今もちょっと痛いんだよ」
「そうなの?」
「そうです!」
「なら、いいや☆」
良かった。
変に心配掛けるわけにもいかないし。
そのうち消える想いを、わざわざ友達に話す必要もないだろうし。
あまり迷惑はかけたくない。
…そう思ってた。
"ダンッ、ダンッ……サクッ"
「…?」
また、あの音が聞こえるまでは…。