ファーストキスは、最後のキス
仕方なく、リツのいる門に行く。
「ごめん、帰ろうか。」
申し訳なさそうに、リツに謝る私。
そんな私に、リツは言った。
「…さくら、まだ屯倉のこと好きか?」
「………。」
言葉が出てこない。
自分でも、自分の気持ちがわからない状態なのだから。
「わかんない。」
「まあ、そういうことは、よくあることだろうから、そんなに暗くなるなよ!」
私のことを思ってのことなのか、リツは明るくしてくれた。
私はきっと、この優しさにずっと、支えられて来たんだろうなぁ…。
「さ、もう帰るよ!あたし、コンクール明日だからさ。練習したいんだ。」
そっか。
ドラムが皆のペースに、追いつかないって言ってたもんね。
「そういうことだから、明日は一緒に帰れないの。ごめんね?」
「うぅん。頑張ってきてよね!」
それにしても、さっきのボールの音は、一体何なんだろう。
翔かな?って思ったけど、誰もいなかったし…。
じゃあ、一体だれが居たというの?
それだけが、私の心を埋め尽くしていた。