ファーストキスは、最後のキス
「今日は、東校との練習試合があります!皆、気合を入れてね!!」
「「はい!!」」
その言葉を発した次の瞬間、"ザっ"と、靴を砂の上で滑らせる音が聞こえた。
東校のバスケ部が来た。
目を吊り上げて、表情が怖いな…。
「綾、今回も負けないからね!」
「東校に勝てるように、こっちも対策立ててきたんだから!」
東校のバスケ部の部長と、うちの西ノ宮高校の部長は、前から仲良しで、ライバルだけど親友のような関係だった。
部長の指示で、メンバーがコートの中に入る。
「「「よろしくお願いします!!」」」
メンバーが頭を下げると、それぞれの位置に着く。
男バスの方も、それと同じ。
メンバーの中には、翔がいる。
ふと、自分の手に視線を落とす。
お弁当を、翔が受け取った時に、微かに触れた指先。
まだ残ってる、あの感覚。
思い出すと、顔が熱を帯びる。
「美奈子、私、ちょっと男バス見てくる!」
「うん、わかった。ゆっくり見てきな!」
男バスの方には、結構ギャラリーが集まっていた。
ネットで覆われたコートの方に、歩いていく。
"ピ―――っ!!!"
笛の音が鳴り響いて、ボールが宙に浮く。
そのボールを、男子の背が高い子が弾く。
男バスのメンバーがとって、ドリブルしながらゴールに走る。
目の前に、東校の男子が来て、それを見た男子は、翔にボールをチェストパスする。
…頑張れ。
ただ、その想いだけだった。