ファーストキスは、最後のキス
そして、下に置いてあるミネラルウォーターを取ると、翔の顔の前に突き出す。
「水分補給したら、ちゃっちゃと帰るよ!」
「へーい」
ダルそうに返事をすると、ボトルのキャップを取る。
ゴクゴク飲むのかと思ったら、翔はそのボトルを、自分の頭の上で逆さにする。
水を弾くように、頭を左右に振る。
バシバシャと、水が髪にあたる音がする。
"ドキンっ…"
心臓が大きく波立つ。
爽やかで、カッコイイ…。
陽がちょうどいい位置にあって、水を浴びている翔が、凄く綺麗に見えた。
「超気持ちぃ…」
水を半分まで使うと、キャップをまた締めて、タオルで自分の頭を拭く。
「よし!帰るか!」
笑顔のまま、私に言う。
急に、顔全体が熱くなる。
「どした?顔赤いよ?りんご病にでもなったか?」
「んなわけないでしょ!!」
とにかく、頭を冷やそうと思い、そこにあったボトルを取って、水を一口喉に流し込む。
「さくら、それ俺の」
「ブエッホ!!ゴホッ!ゴホッ!」
「男の前で、水吐く奴初めて見た」
呆然と、口を開けてこちらを見る。
「ぁ、ああ 当たり前でしょ!?か かかか…か…」
「か?」
「もう、何でもない!!」
翔を置いていく程の早足で、学校の門を抜ける私。
慌てて追いかけてくる翔。
言える訳ないよ。
"間接キス"だなんて…。