ファーストキスは、最後のキス
「よっ!偶然じゃん。なに、買い物?」
「うん、お母さんに買ってきたら、CD買って上げるって言われて、釣られちゃいました」
「俺は、兄貴に雑誌買って来いって言われた。一応、大学生だから、買いに行く暇ないみたい。コンパとかで…」
そっか、雅人ってお兄さんいたっけ。
一応、優しい弟ってわけね。
近くのベンチに腰を下ろすと、しばらく雅人と喋る。
「でさ、先輩がボールを蹴りあげすぎて、ボールが道路に出ちゃって、そのボールをトラックがはねて、近くの川に流されてったの」
「先輩ナイスじゃん☆」
「じゃあ、今度は俺もやっちゃおうかな♥そん時も、ナイスって言って?」
「雅人は、やっちゃダメ!ボールの個数が減ってくっしょ!」
「ケーチ」
口をムッと尖らせる雅人。
雅人って、見た目からすると、結構クールっぽそうに見えるけど、こんなハッチャケた性格だったんだ。
なんか、新鮮だなぁ…。
「じゃあ、私、そろそろ帰るね!お母さんがカレールー待ってるんで♥」
「わかった!長話して、ごめんな!また、明日」
「うん!楽しかった!バイバーイ」
スーパーの袋を片手に、アスファルトの上を走る。
肌をかすめる風が、ちょうどいいくらいに涼しい。
もう、夏だなぁ。と、感じる。
今年の夏は、何をしよう。
海に行くのは、あたり前。
花火は、絶対やる。
お泊り会とか、皆でやってみたいなぁ♪
そんなことを考えながら、玄関を開ける。
「買ってきたよー!」
袋を、リビングにあるテーブルに置く。
お母さんは、カレーの下準備を終わらせていた。
「遅れてごめんね。ちょっと、男友達と遭遇して、喋ってた」
「あら、もしかして彼氏!?」
「だーかーら、友達だって!」
「フフッ、はいはい。お疲れ様」
いたずらに笑うと、お母さんは、スーパーの袋からカレールーを取り出す。
私は、それを確認すると、階段を上って部屋の戸を閉めた。