ファーストキスは、最後のキス
「リツー!帰るよー!」
吹奏楽部が活動している、音楽室のドアを開ける。
そこには、リツが1人だけでドラムの練習をしていた。
「あ、さくら。ごめんな。なかなか、皆のペースに合わなくてさ。練習してた」
「うぅん。リツは、一生懸命だね」
「来週は、コンクールだからさ、遅れてる暇なくて…」
喋りながら、ドラムを叩くリツ。
「さくら、今日は、先帰ってていいよ!」
「待ってるよ?」
「親友命令っ!時間かなり掛かるだろうし、待たせるわけにはいかん」
ちょっと怒ってるようにも聞こえるけど、
これは、リツの小さな優しさ。
まったく、ツンデレなんだから。
「……わかった。じゃあ、また明日ね。」
「おぅっ!明日は一緒に帰ろうなぁ!」
「明日は、土曜日だよ。」
「あ…。じ、じゃなくて、来週は一緒に帰ろうな!」
「うん!」
音楽室のドアを閉めると、私は静かな廊下を歩く。
こういう静かな学校ってなんだか、少しいいかも。
コツッ…コツッ…って、上履きが廊下と合わさるときの音が心地いい。
窓の外を見てみると、陽が段々と落ちていた。
「………。」
なんで、この陽を見ていると、胸が痛くなるんだろう。
綺麗なはずなのに…。