-towani-
「久野くんは、
家どの辺なんですか?」
「俺は西中のあたり」
じゃぁ真反対のコンビニで
アルバイトしてるんだ…。
「ここのコンビニだけ
何でか時給がちょっと高いから
こっちまで来てバイトしてんだ」
セコイだろっと苦笑いをした久野くん。
でも、
そんな風には思わなかった。
「立花は家どこら辺?」
「ぁ、そこの角曲がってすぐですっ」
「送ってくよ」
「えっいいですよッ!!
すぐそこなんでっ!!」
「いいから……、送らせて?」
「〜〜〜〜///
………ぉ、ぉねがいします…///」
上目遣いの久野くんは、
いつもより目が大きく見えて、
男の子なのにかわいいと思ってしまった。
失礼だと思った。
「………。」
「………。」
久野くんは自転車から降りて、
あたしの隣に歩いている。
何だか変な感じ。
今までだったらあたしの隣には
誰もいなかったのに、
今は久野くんがいる。
「ぁの、…久野くん…。」
「ん?」
「いろいろ、…ありがとうございました。
話し掛けてもらったり、
仕事を一緒にやろうって、
言ってくれて………
ありがとうございました。」
「……。
別にお礼言われる事はしてないと思うけど?
俺も楽しかったし、
いいよ。
ありがとう」
久野くんの笑顔は、
優しい笑顔。
この笑顔が、
別の意味で『好き』だと思ったのは、
随分、後の話―――……