TRIANGLE Cloud -三角形の絆-
1st 黒の男 白の男

コツン、コツン・・・

俺の靴の音が階段に響く。本来なら生徒が騒いでて聞こえないはずの足音。昼休みにも関わらず聞こえるのは、俺以外の誰も屋上に近寄らないから。もちろん下からは、多くの生徒の話し声や笑い声が聞こえるが、それももはや俺自身の足音に負けているように聞こえる。

屋上のドアが目の前に現れた、周りの壁は灰色で、明かりは窓から差し込んでくるものしかない。なんとも寂しい屋上前の扉。
いつも鍵が置いてある割れて使い物にならなくなったバケツの中に手を入れる。
ほこりがつもっているために少し気が引けるが、鍵を隠すにはもってこいの場所なのでがまんする。

なにも言わず、さっと手を払って埃を落とし鍵を開ける。
遠慮なく回し、ガチャッと大胆に音を立てたがもちろんそれに気づく人もいない。
鍵をバケツの中に戻し、誰もいないであろう屋上に入った。

目の前に、青い空が広がった。
今日は快晴だ、空の色は冬であるからか、空気が乾いているため淀みがない。
でもやはり、寒さは俺の着ている黒のブレザーを貫き、身体の芯まで凍えさせてくる。
一瞬だけ体がぶるっと震えるが、慣れるにつれ意外とどうでもよくなってくる。
俺は屋上のコンクリート張りの床に足を進め、適当な感じでバタンとドアを投げるかのように後ろ手で閉めた。

ドアから左に進み、突き当たったところにあるフェンスの前の段差に腰掛ける。
後ろにはグランドが広がっており、休み時間にサッカーをしている連中の叫び声が響いている。
俺からしてみれば、やかましくもなんともない、だがただの雑音でしかない。興味がない。

その声が響くなかで、俺は段差に寝転がって空を見た。

さっきの空となにひとつとして変わらない、変わっているのは雲で、空じゃない。

そんなことを考えていると、だんだんぼーっとしてきた。
寝たらほぼ確実に授業に遅刻するが、まあ寝たことは今までない。
それに万にひとつ寝たとしても、冬の寒さが俺を叩き起こしてくれる。

そして俺はひたすらぼーっとした、下の雑音なんかもう耳に入らない。
脳に感じられるのは、雲が変化しているなにひとつ変化しない空。
陽射しは穏やかで、あまり暖かさも感じられなかった。

しばらくしてからだった。

ガチャリ・・・

ドアの開く音、俺はその音でこのゆったりとした時間を途切れさせてしまった。
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