TRIANGLE Cloud -三角形の絆-
一時的に気になりはしたが、俺は寝転がったままだった。
理由は簡単。誰が来るかおおよそ見当は付いていたから。
「梗(コウ)、またそんなとこで寝てさ・・・風邪引くぞ???」
「かまやしない、それを言うならお前もだろ右治(ユウジ)。」
俺は声のする方へ顔を向けた、俺と同じ服を着た、大人しそうな眼鏡をかけた男子生徒。
少し風が吹いて、右治の黒く長めの髪がなびいた。
寒いなあと言いながら、右治は体を震わせていた。
「お昼は?」
「食った。お前は?」
「僕も。」
そんな会話をしながら、右治は俺の頭の横に腰掛けた。
俺は寝転がったままで、少し伸びをした。
右治が来るのはいつものことで、話すと退屈しないからなんとなく落ち着く。
まあそれは俺と右治が幼なじみだからお互いをよく知っているからと言うのがあるからだろう。
俺が誰かと団体でいることを好まないことを右治は知っているし、逆に右治が引っ込み思案であることも俺はよく知っている。
お互いの足りない部分を補い合うとまでは、苦手なものが共通しているのでできないが、少なくとも腐れ縁ではないことは確かである。
「式部、来ないね。あと20分で昼休み終わりだよ。」
「あいつはあいつの人付き合いがあるからな、まああいつが来なかったらなんかあるんじゃないのか?」
「そうだな・・・あ。」
「そうだそうだ、ふあ~あ」
さっきまでぼーっとしていたのが出たのか、頭に酸素がきちんと廻ってないようだ。
相当深いあくびをしたので、最後に右治がなんて言ったのか聞こえなかった。
あくびの後目を開けると、至近距離に少し不機嫌そうな女の顔。
「・・・なんだお前?」
「あたしが来なかったことに右(ユウ)ちゃんは気をかけてくれたのに梗ちゃんはのんびりあくび?のんきなこと-。」
顔をどけてようやく理解した。
長い髪に細く長い脚、結構、いや、だいぶ整った顔つきのいわゆる美人の女子生徒。
「ごめんね右ちゃん、生徒会の集まりがあってさ。」
「いや、毎日来るのに来ないからちょっとだけなにかあったのかなってだけだよ。」
「そう、でもまあ梗ちゃんなんかより全然優しいじゃない。ねぇ、梗ちゃん。」
「言っとけ、知るか。」
俺達なりのおふざけがいつも会話の前に始まる。
式部も俺の幼なじみで、今こそふざけあってはいるがこいつも俺をよく知っている。