ソラとクローバー☆もうひとつの『アルタイル』

2人で行った映画館。


高校の校門前。


体育館。


思い出の場所をたどるけど、そのどこにも彼女はいなかった。



最後に訪れたのは、大学。



もしかしたら、と思ったその期待は簡単に外れた。


監督は練習で席を外している、その監督室をあとにして誰もいないキャンパスを歩いた。


もう、空は真っ暗に夜の訪れをつげ、そこからは細かい雨が途切れることなく落ちてくる。


「汐・・・・」


つぶやいた先に、ふと見えたベンチ。


初めて、汐と会話らしい会話を交わしたあのベンチもまた、雨にしっとりと濡れていた。


そして、ここで汐が待っててくれた。


「願いのかなうクローバー」を持って。


俺を、待っててくれたんだ。


ブーブーブー・・・・


ポケットの中の携帯が震える。


「はい」


声の相手は、タイチだった。


その続いた言葉に、俺は持っていた傘を落とした。


『今、トモから電話があった。凱から連絡があったらしい・・・・汐ちゃんを見つけた、って・・・・』



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