月の光の向こう側
出会い
 とぼとぼと一人歩いていた。

 涼しい夜だった。ううん、涼しいというより少し肌寒い夜。なのにあたしはノ−スリ−ブのワンピース一枚で、上着をクロ−クに預けたまま怒りにまかせて店を飛び出した事を後悔した。

「さむ…でも今更格好悪くて戻れないよ」

 今頃あいつはどうしてるだろう。
 あたしを追って店を出たのだろうか、それとも…。
 鞄から携帯を取り出して画面を確認する。
 確認しなくても着信音なんて一度も聞いてないんだから分かってるけど、それでもそうしなければ気が済まなかった。
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