月の光の向こう側
「分かってるけど、へこむわね」

 メ−ルも電話も無しの画面を睨み、駄目押しとばかりにメ−ルの問い合わせをしてみる。

「受信ゼロ…か、そうだよね」

 なにやってんだろう、あたし。

 自分のあまりの馬鹿さに軽い目眩を感じながら、あたしは立ち止まって空を見上げた。

 どこからか金木犀の匂いがする。

 人通りの無い住宅街。全然賑やかな通りに出ない。
 さっきの店から駅まではそう遠くない筈なのに、方向音痴が災いして違う方向に来てしまったのかもしれない。
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