月の光の向こう側
「何から何までついてない」

 いくら歩いても駅には着きそうも無くて、今朝下ろしたばかりの靴は、足に合っていないのか、さっきから踵がズキズキと痛い。

 久しぶりのデ−トだから気合いを入れ過ぎて同僚の里枝から「今日可愛いすぎ、何やる気出してんの?」なんてチェック入れられる程だった。

 今日会うの凄く楽しみにしてたんだけどね、あたし。

「なのにさあ、あたし一人浮かれてバッカみたい」

 空き缶でも石ころでも、なんでもいいから蹴飛ばしたい。
 そんなやさぐれた気持ちにすらなってしまいそうだった。
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