初恋
4月 入学式

プロローグ

長い長い坂を登る。
まだ着なれないセーラー服と、まだ持ちなれない学生鞄。
緊張と興奮も手伝って、美月は坂を登りながら息があがってくる。

今日は中学校の入学式。

私、清野美月(せいのみつき)。12歳。

今日から桜ヶ丘中学校の生徒になる。
別名桜中と呼ばれるこの中学校は、その名の通り、桜が校庭を一周するように植えられている。

遠目にも満開の季節には美しく、美月は小学生のときから中学に上がるのを楽しみにしていた。

セーラー服で通うお姉さんたちは、皆大人びて見えてお洒落だった。
とても2歳程度しか変わらないとは思えなかった。

桜中には襟からスカーフをだす量である決まりがある。
少しだけ三角が見えると恋人がいる。
たくさんだすと恋人募集中。

新入生は出したらダメ。
新入生が襟から出すと、上級生に目をつけられる。

2つ上の姉がいる美月はその辺のレクチャーも受け、目立たないよう綺麗にスカーフを結んだ。

紺色のセーラー服に真っ白なスカーフが映える。
スカートは長いけど、新入生が目立つのは今後の中学生活に影響すると思い、我慢する。

先輩との上下関係は、小学生の時にはなかったから若干心配だけど、今はそれよりも期待で胸がいっぱいだった。

半分以上が同じ小学校から上がるので、不安はあまり感じなかった。
美月は自主クラブのバスケットボールを長年やっていたので、部活はバスケ部に入るって決めていた。

「今日から中学生だ!中学校では後悔のないよう、充実した毎日が過ごせるよう、目一杯楽しもう」

そうして、美月は決意を胸に中学校の校門をくぐった。
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