初恋
「疲れた?」

土田くんが美月の溜め息に反応して、気遣ってくれる。

「ありがとう。大丈夫!毎日走っているからこれくらいまかせて〜」

「まぁ、結構飛ばしたし、ちょっとここでゆっくりしような」

飛ばしてなんかない。

ゆっくり回ってくれたのに、優しいなぁ…

実際、ちょっと疲れていたからそう言ってくれて、ありがたかった。


皆、それぞれ鞄から水筒と支給されたおにぎりの包みをだす。

丁寧にお絞りもついている。

汚れた手を念入りにふく。

包みを開くと、大きなおにぎりが2つ入っていた。

口いっぱい頬張って食べていたら、そんな美月をみてしぶちゃんが笑い出した。

「清野、口入れすぎ!」

「もー、しぶちゃんだって、ご飯粒ついてるよ!」

二人のしょうもない言い争いをみんなで笑う。

ふと空を見上げると一時、晴れ間が見えた。

真っ直ぐに射し込む光。

雨に濡れた新緑が、太陽の光でキラキラ光る。

本当に束の間の一瞬のことだったけど、心が洗われたような気がした。

気がつけば、また空はどんより重たくなっている。

それでも雨は上がり、歩きやすくなった。

休憩を終えて、あと一つチェックポイントを越えれば、後はゴールを目指すだけ。

地図を確認して出発する。

オリエンテーリングはもうすぐ終わりを迎える。

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