初恋
「なんかもう少ししたら止みそうだね」

空を見上げながら、美月が言うと亜依が「少し話していこうか」と言った。

一緒に一年生の教室に行く。

筋トレの後だから、階段がきつい。

「いたた…」

「今日の筋トレ、ハードだったよね」

亜依とひーひー言いながら美月のクラスに着く。

「土田くんの机ってどこ?」

「ここだよー」

そう言って、美月は土田くんの席に座った。

なんか、やっぱり他の人の椅子とは違うよ。

座っているだけで、胸がドキドキする。

なんか悪いことしている気分。

そっと机に伏せてみる。

そんな美月をにやにやしながら亜依が見ている。

「もー」

照れ隠しに怒ったような顔をして、「亜依の教室行こ」と逃げるように教室をでる。

「金井くんの席は?」

今度は美月が聞く。

亜依がそっと、いとおしそうに机をさわる。

「じゃあここが亜依の席だね」

そう言って美月が亜依の椅子に座ると、亜依は金井くんの椅子に座った。

もじもじしていてかわいい。

二人で思わず笑い出す。

「いいな―。亜依は席が隣で。いつでも喋れるね。あたし、今日土田くんとしゃべれなかった…」

「でも金井くんは、無口であんまり女の子と話さないんだよね。」

「そうなんだ…でも亜依とはよくしゃべるんでしょ?」

「うーん…昔から知っているから、他の子よりは話すかも」

「なんか特別って感じでいいなぁ」

コイバナはあっという間に時間がたつ。

時計を見ると、もう一時間近く話していた。
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