+Sariel+
チャイムが鳴った。
ソファで寝ていたあたしは、跳ね起きる。
心臓が大きく高鳴っていた。
…誰が来たのかなんてコトは、分かっていた。
ゆっくりと玄関に、すり足で向かう。
サァーサァーと、床が擦れる音がした。
適当に脱いであった、サンダルを履いて。
ドアノブに手を伸ばす。
ほんの一瞬、躊躇って。
ごくりと唾を飲み込む。
ドアノブを掴んだ右手を、引いた。
「・・・どーも」
目の前に立っていたのは、若い金髪の男だった。
一瞬、運送会社かと思って。
少し、肩を落とす。
・・・だけど、制服を着てない。
黒い7分のTシャツに、よれよれのジーンズ。
男はにっと、笑って見せた。
「えと・・・」
「アズサちゃんでしょ。…俺のこと、分かるよね」
…この人が。あたしは2回、首を縦に振った。
大きくて少し恐そうな目に、高い鼻。
少し不釣合いな大きめの口を除けば、とても端正な顔立ちだ。