+Sariel+




ブーブーと、男が文句をたれる。

あたしはふぅっと息をつくと、ヘルメットをかぶった。



正直、この偏頭痛で、歩いて家まで帰るのはキツイ。

あたしは、ギンの後ろに行って。
そっと、バイクにまたがる。



「アズサちゃん、バイク乗るの、初めて??」


あたしに背を向けたまま、男は訊く。


「うん、そ」


あたしは素直に、答えた。


「んじゃあ、しっかり背中、つかまっててよ。
じゃないと、アズサちゃん軽いから。

エビゾリになって、んで吹き飛んじゃうからね」




あたしは、ギンの背中をじっと見つめる。




あたしよりずっとずっと、広い背中。

急に彼が“男”であることを意識してしまって。



少し、顔が熱くなる。





「ほら!!腰の辺り、手ぇまわして!!」






男の手が、あたしの腕を掴む。


そして、自分の腰辺りで、交差させた。





< 28 / 90 >

この作品をシェア

pagetop