+Sariel+
ブーブーと、男が文句をたれる。
あたしはふぅっと息をつくと、ヘルメットをかぶった。
正直、この偏頭痛で、歩いて家まで帰るのはキツイ。
あたしは、ギンの後ろに行って。
そっと、バイクにまたがる。
「アズサちゃん、バイク乗るの、初めて??」
あたしに背を向けたまま、男は訊く。
「うん、そ」
あたしは素直に、答えた。
「んじゃあ、しっかり背中、つかまっててよ。
じゃないと、アズサちゃん軽いから。
エビゾリになって、んで吹き飛んじゃうからね」
あたしは、ギンの背中をじっと見つめる。
あたしよりずっとずっと、広い背中。
急に彼が“男”であることを意識してしまって。
少し、顔が熱くなる。
「ほら!!腰の辺り、手ぇまわして!!」
男の手が、あたしの腕を掴む。
そして、自分の腰辺りで、交差させた。