+Sariel+
「離しちゃ、ダメだよ!!んじゃ、出発進行ー!!」
小さな子ども染みた声を出して。
男が嬉しそうに笑う。
それに応えるようにバイクがうなって。
走行を開始する。
バイクの上は、意外と心地がよかった。
風を切って、あたしたちは走っていく。
ただ、ちょっと、肌寒い。
あたしはそっと、ギンの背中に耳を当てた。
・・・なんだか、すごく懐かしい気がする。
すごく懐かしくて・・・安心する。
あたしは目を閉じて、そっと微笑む。
「えっとー、じゃあ、これからどーしよっか??」
ギンが、大声であたしに訊いた。
「え、家に帰るんじゃないの??」
「えー??今、何て言ったー??
アズサちゃん、声小さすぎて聞こえねー!!」
あ、そっか。
バイクの上って、風の音とかで、声が聞こえにくいんだ。
あたしも、ギンに負けず劣らず、大きな声を出す。
「あたし!!今日、朝食も食べてないんだけど!!」
「あー!!お腹すいた?!
・・・んじゃ、ファミレスでも行こっかぁ!!」
ギンが、嬉しそうに笑った。
耳に押し当ててある背中が、少し揺れる。
そんな事が、なんだか嬉しくて。
あたしは思わず、笑みをこぼす。