+Sariel+
「おっしゃっ!!」
本当に取れるのかな??
少し横目で、その様子を見守る。
それから、ふっと顔を逸らした。
あたし、あと2日後に死ぬんだ。
そんなことをぼんやりと思う。
気がつけば、ガラス越しに見える外は夕日色で染まっていた。
現実感がない。
まるで、今が夢の中にいるようだった。
普通の高校生って、こんな感じなのかな??
だったらあたしは今、平凡な幸せをかみ締めてるのかな??
そう考えてたら、なんだか馬鹿らしくなって。
平凡な幸せなんて、あたしにはもう、遠い夢の話。
ありえるはずのない、現実。
「ほらっ!!なにぼおっとしてんのっ」
ギンの声がして。
頬に柔らかくてフサフサなものが当たる。
横を見ると。
それは、さっきまであたしが指差してた猫のぬいぐるみ。
「え?!もう取ったの?!」
「取りやすい位置だったし。ま、俺、天才だしっ♪」
変なことをほざいているギンを無視して。
黒いぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。
それは生きているもののように、温かい気がした。