+Sariel+
倒れた茶髪の男の上に、ギンが馬乗りになった。
そして、何度も顔を殴りつける。
周りの仲間は、恐怖で手も足も出せず、固まっているようだった。
ギンは構わず、強い力で殴り続ける。
ギンの瞳は、さっきまでの彼とは思えないほど違っていて。
あたしは思わず、その目に怯える。
ギンは、殴ることを止めようとはしない。
それを、ブラウン管の中のことのように遠くから見ていたあたしは、ハッと我に帰った。
床は、男の血の海だった。
やばい。
そう思う。
このままだと、ギンはこの人を殺してしまう。
ギンはきっと、自分を止められない。
「ギンっ・・・!!」
あたしはぎゅっと、ギンに抱きついた。
拳を振り上げたギンの動作が、止まる。
遠くからばたばたと、定員がやってくる音がした。