+Sariel+









・・・お風呂場から、シャワーの音がする。

ザーと、小さな音が。


こんな風にシャワーの音をリビングで聞くのは、久しぶりな気がした。


・・・この家では、シャワーを浴びる人はあたし位しかいないから。



いつからかな??

シャワーの音が聞こえなくなるくらい、あたしの家が崩壊し始めたのは。


家の電話が、鳴って。

シャワーの音を掻き消した。


ソファにぼおっと座っていたあたしは、思わず跳ね上がって、立ち上がる。


鳴り止まない音にイライラしながら、傍まで走って。
電話機を、取った。


『・・・梓??』


電話から聞こえてきた声に。
あたしの心臓は跳ね上がった。

左手で持っていた受話器を、右手に持ち変える。



「・・・お母さん」


『久しぶりね。今、そっちにいってるから』



「え・・・?!」




『今日、宮元さんが来てくれる日でしょう??

母さん、宮本さんが来る前にそっちに行って、帰るわ』






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