+Sariel+




やばい。


あたしは、受話器から耳を離す。
シャワーの音が聞こえた。

今・・・帰ってきたら、絶対ヤバイ。


「おか・・・」

『それじゃあ、また後でね』


電話が、ブチリと切れた。


プーップーッと、虚しい音があたしの耳を通して聞こえてくる。



・・・どうしよう。

お母さんが帰ってきた時、あたしが家にいないのはマズイ。


・・・やっぱり、お母さんが来る前に。
ギンを家から出さなきゃ。




気がつけば、シャワーの音は止まっていて。

風呂場の方向から、タオルで頭を拭きながらギンが、やって来た。



Tシャツに赤いチェックのシャツ。

少しスリムなジーンズ。


お義父さんのタンスの中で、一番マシだった服だ。



ギンが着ると、普通の格好が案外、イけているように見えた。



「あ♪アズサちゃん、お風呂ありが・・・」


「ギン!!
お母さんが帰ってくるの!!
急いで、近くのコンビにまで逃げて!!」




ギンの目が、大きく開く。






< 53 / 90 >

この作品をシェア

pagetop