+Sariel+
やばい。
あたしは、受話器から耳を離す。
シャワーの音が聞こえた。
今・・・帰ってきたら、絶対ヤバイ。
「おか・・・」
『それじゃあ、また後でね』
電話が、ブチリと切れた。
プーップーッと、虚しい音があたしの耳を通して聞こえてくる。
・・・どうしよう。
お母さんが帰ってきた時、あたしが家にいないのはマズイ。
・・・やっぱり、お母さんが来る前に。
ギンを家から出さなきゃ。
気がつけば、シャワーの音は止まっていて。
風呂場の方向から、タオルで頭を拭きながらギンが、やって来た。
Tシャツに赤いチェックのシャツ。
少しスリムなジーンズ。
お義父さんのタンスの中で、一番マシだった服だ。
ギンが着ると、普通の格好が案外、イけているように見えた。
「あ♪アズサちゃん、お風呂ありが・・・」
「ギン!!
お母さんが帰ってくるの!!
急いで、近くのコンビにまで逃げて!!」
ギンの目が、大きく開く。