+Sariel+
「アズサちゃ・・・」
外で、車が止まる音がした。
お母さんは、すぐ来るといったらすぐに来る。
そういう性格だ。
・・・でも、こんなに早いなんて。
今、彼を外に出せば、お母さんと鉢合わせになる。
それだけは、避けなきゃ。
「ギン!!あたしの部屋に行って!!」
「え・・・でも」
「早く!!」
あたしの迫力に気押されたように、ギンは急いで階段に向かっていった。
ギンの、階段を駆け上がる音がする。
二階で、ドアが閉まる音がした瞬間。
玄関のチャイムが鳴った。
「アズサー??居るのー??」
玄関から。お母さんの声がした。
久しぶりに聞くその声に。
あたしの心臓はまた、跳ね上がる。
・・・今日は、朝早くからいろいろありすぎて。
心臓がついて来てくれない。
居間の、ソファに座って。
あたしは大声を張り上げた。
「居るよ!!お帰りなさい」
テレビをつける。
寝ぼけたテレビがようやくついた瞬間、お母さんが居間に入ってきた。
お母さんの顔をじっと見る。
「・・・お帰りなさい」
「ただいま。
・・・っとに。
ここは何時来ても、本当に寂しいわね」