+Sariel+
*
「どこに行くの??」
バイクの後ろに乗って。
あたしは、目の前のギンの背中に大声で聞いた。
・・・寒い。
長袖を着ていて、本当に良かったと思う。
「んー??もうすぐだから!!」
ギンが、大声で返す。
あたしは、その背中に耳を当てる。
それから15分ほどして。
バイクは、あるアパートの前で止まった。
「・・・ここ、ギンの家??」
先にバイクから降りたあたしは、アパートを見上げながら言う。
築何十年もなってそうな、ボロアパート。
その壁の色は剥げかけており、もう、もともと何色だったのかも分からない。
「違うよー??・・・ほら、行こう!!」
いつの間にか、バイクから降りていたギンは。
あたしに向かって微笑む。
それから、スタスタとアパートの中に入っていった。
アパートは5階建てで。
でも、古すぎてエレベーターもない。
あたしとギンは、すぐ近くにあった階段を上っていく。
「そういえば、お昼も朝も、ご飯食べてないね」
「・・・あたし、お腹すいてないし」
「アズサちゃん、本当に小食だなー!!」
そんなことを話しながら。
階段を上っていく。
上りにくい階段を、踏み外さないように一歩ずつ。
確実に。
すいすいと上っていくギンの後ろを、あたしはあくせくしながら付いて行く。