+Sariel+
「・・・ギン」
何かの衝動に駆られるように、その名を呼んだ。
彼が、ようやくあたしを見る。
あたしは寝たまま、ギンに近寄って。
その唇に、自分の唇を重ねた。
月明かりに照らされて出来た、二人の影が、ぴったりと重なる。
そっと、唇を離す。
あたし達は数秒、見詰め合った。
「・・・なぁ」
「なぁに??」
「義父にレイプされた時、どう思った??」
色素の薄いその瞳を、じっと見つめる。
「・・・死にたいと思った。
あたしの何かが壊れてしまって。
どんなに体を洗っても。あたしは汚くて。
結局、この世界に生きる価値さえない人間に思えて。
・・・・・わかんない。
辛いなんて言葉じゃ、言い表せない」
ギンがあたしを引き寄せた。
今度は、彼のほうからあたしにキスをする。
顔を離したとき。
あたしは思わず、息を呑んだ。
ギンの瞳には、涙が光っていた。
「・・・ごめん」
「・・・どうして、謝るの??」
「ごめん・・・ごめんな・・・」
まるで、それだけを言う機械のように。
涙を流しながら、ギンは何度も呟いた。
心が、潰れるようだった。
ギンの顔は、苦しそうで。
「・・・ギン」
その体を、ギュッと抱きしめる。
二人の体温が、通い合う。
まるで、ひとりの人間になってしまったかのように。