+Sariel+
最終日
「アズサちゃん」
その声に、あたしは体を固まらせた。
ゆっくりと、声がした方向を見る。
ギンは、こちらをじっと見ていた。
彼の後ろには、朝日が輝いている。
「・・・屋上で、何してるの??」
あたしは、屋上の柵に体重をかけたまま、じっとギンを見る。
・・・後ろに体重をかければ、落ちてしまう高さの柵だ。
唇をぎゅっと、噛んだ。
「・・・なんとなく・・・そんな気がしてた」
あたしは、何も言えなかった。
何を言ったらいいのかわからなくなった。
ただ、ギンの顔を見たらなぜか安心して。
ドッと涙があふれ出てきた。
ギンが一歩前に踏み出してくる。
「近寄らないで!!」
あたしは叫んだ。
少し後ろに体重をかけると、あたしの体は少しぐら付いた。
「・・・ごめん・・・約束守れなくて。
でも、無理なの・・・あたしは・・・無理なの・・・」
「アズサちゃん、駄目だよ」
ギンは、あたしに笑いかけた。
あたしの顔をまっすぐと見て。
彼から視線が逸らせなくて。
あたしは震える右手で、震える左腕を押さえる。